本稿の目的は,ラカトシュによる数学的知識の生成論を,特に零定義と証明生成定義に焦点を当てて明らかにし,その活動の学校数学への援用可能性を検討することである。この目的を達成するために,まず証明と論駁を通した数学的知識の生成活動の諸相を規定した。この活動の諸相には,先行研究では明らかにされてこなかった,零定義を証明生成定義へと洗練していく過程が含まれている。そして,学校数学における事例を用いた活動の提示(多角形の接着),及びその活動の教育的意義の考察に基づいて,学校数学への援用可能性を検討した。以上より,ラカトシュによる数学的知識の生成論を,学校数学に援用することは理論的には可能である,ということが本稿の結論である。