数学的定義の構成に関する先行研究では,定義と例の相互作用に着目することが有効であると指摘されているものの,定義と例の相互作用を統制するメタ言語に着目した理論的考察は十分にされていない.本稿では,数学的定義の構成過程における「メタ定義」の意義を明らかにすることを目的として,(Ⅰ)文献解釈と概念分析による意味の規定,(Ⅱ)具体的事例を通した考察による価値の指摘を行った.(Ⅰ)の結果,「メタ定義」を,「系統性」,「的確性」,「最少性」,「選択性」,「優美性」,「合目的性」の六つを構成要素とする,メタ言語によって記述される定義についての事柄の総称と規定した.(Ⅱ)の結果,「メタ定義」には,定義と例の相互作用を統制しながら定義の構成を促進し,図形を体系的に整理したり,図形を発見的に構成したりすることができるという価値を指摘した.