本研究では,熟達雰囲気を高めるための授業実践を行い,その手続きの有効性と児童の好意的態度に与える効果について検討することである。本実践では,小学校第5学年(計59名)を対象に全9時間のゴール型ハンドボールの授業を行った。分析にあたっては,単元前,単元後,単元1ヶ月後の3時点で質問紙調査を行い,反復測定分散分析を用いて各尺度における平均点を比較した。結果として明らかになった5点を以下に示す。
1) 本研究で設定した手続きは,熟達雰囲気を向上させることに有効であった。
2) 自我志向性が高くなりやすいと推測されるボール運動であっても,熟達雰囲気を強調することで課題志向性を高める可能性が示された。
3) 本研究で設定した手続きは,好意的態度を高めることは困難であった。
4) 熟達雰囲気と課題志向性のどちらも単元1ヶ月後には単元前と同水準まで低下してしまうことから,介入の効果は維持されないことが示唆された。
5) 好意的態度を高めるためには、児童の実態に即した挑戦的な課題を設定する必要性が示唆された。