従前の球戯史研究では、当該民族の宇宙論的観念からボール及びボール・ゲームの発生・成立が説明されてきた。しかしながら、ボールをボールの移動、つまりゲームの進行は、プレーヤーの筋力に依存するところが大きく、ゲームの中味に立ち入る場合、その成立要件としての力学的な問題は看過できない事柄である。こうした立場から本稿では、北米先住民族の球戯にみられるボールの機能と構造とについて詳細に分析・検討を行い、ここ(前近代的スポーツとしての球戯)においても、その成立要件として近代スポーツとしてのボールゲームに顕著にみられる「ボールを操作する時の正確性と安全性への配慮」が確認される、としている。