本稿は、「スポーツを楽しく観るために」という連載テーマの基に、アラスカ先住民の伝統的競技会の様子が詳述されており、なかでも、当該民族の日常生活に根ざした伝統的な遊びや競技が数多く紹介されている。▼ 1年の大半を雪と氷に囲まれた極寒の地で狩りに必要な力を養うためにからだを鍛えるものが殆どで、逞しく、楽しく暮らしていくための訓練や娯楽そのものが競技として行われている。ここでは、「ブランケット・トス」や「ナックル・ホップ」、「インディアン・スティック・プル」、「フォーマン・キャリー」など漁(猟)に欠かせない能力を試すものから「イヤー・プル」、「イヤー・ウエイト」など耳がちぎれるほどの痛みに耐えるための訓練が競技になったものなどが取り上げられ、いずれも自らのアイデンティティを確認するための文化装置としての機能を有していると説明されている。