その他の研究業績等に関する事項

基本情報

氏名 田村 優樹
氏名(カナ) タムラ ユウキ
氏名(英語) TAMURA Yuki

翻訳書、学会発表、講演等の名称

【招待講演】 温熱刺激による骨格筋ミトコンドリアの適応

その他分類

国内学会発表

単・共の別

発行または発表の年月

2016/07

発行所、発行雑誌等又は発表学会等の名称

第24回日本運動生理学会大会 「運動生理学分野におけるミトコンドリア研究の最前線」

概要

ミトコンドリアは、エネルギー産生や細胞内の恒常性維持に貢献する細胞小器官である。 骨格筋のミトコンドリアの量や機能を高めることは、骨格筋の健全度の維持や持久的運動 能力の向上に有用である。骨格筋のミトコンドリアの量や機能は、持久的トレーニングに よって高めることができる。しかし、誰しもが常に高強度・高容量のトレーニングを実施 できるわけではない。そこで、効果的・効率的なトレーニング方法や持久的トレーニング を模倣するリハビリテーション方法の開発が望まれている。我々は、この解決策として「温 熱刺激」の可能性に着目した。
「身体を温めること」は、日本人の伝統的な生活習慣であり、医療現場においても古典 的な物理療法として採用されている。温熱刺激による身体への好ましい効果は、経験的に 確かめられてきた部分が多く、必ずしも科学的根拠が明らかではなかった。しかし、運動 生理学分野の多くの日本人研究者の貢献により、知見が蓄積されてきた。例えば、温熱刺 激は、骨格筋損傷からの回復を促進し、不活動や加齢に伴う骨格筋萎縮を抑制することが 明らかにされた。さらに、レジスタンス運動に伴う骨格筋肥大応答を温熱刺激が亢進する ことも近年明らかにされている。一方で、温熱刺激が骨格筋のエネルギー代謝に与える影 響は、十分な理解に至っておらず、検討の余地がある。
マウス骨格筋由来の培養細胞に温熱刺激を与えると、ミトコンドリアが増加することが 近年示された。この先行研究は、ミトコンドリアの量や機能を維持・向上させるトレーニ ング方法やリハビリテーション方法として温熱刺激が有用である可能性を示唆するもので ある。我々はまず、単独および運動後の温熱刺激によって生体の骨格筋ミトコンドリアが 増加することを明らかにした。(Tamura et al., Am J Physiol Regul Integr Comp Physiol, 2014)。続いて、温熱刺激は、座骨神経切除による骨格筋ミトコンドリアの減少を抑制する ことを明らかにした (Tamura et al., J Physiol, 2015)。これらの研究は、温熱刺激は骨格 筋ミトコンドリアの量を正に制御することを示すものである。
最近、老齢マウスの骨格筋におけるミトコンドリア品質の低下・付随するストレス応答 が、温熱刺激により軽減されることを見出した(Tamura et al., J Gerontol A Biol Sci Med Sci, 2016)。この知見は、ミトコンドリアの「量」だけではなく、ミトコンドリアの「品質」 や「品質管理機構」についても、温熱刺激による適応が期待できることを示唆する。
本発表では、温熱刺激による骨格筋ミトコンドリアの適応に関して、我々の研究成果を 整理し、概説する。さらに、他の研究グループの関連研究や我々の未公表データを交えて、 議論を深めたい。

共著者等

 

掲載ページ数