幻想と怪奇の英文学IVーー変幻自在編
春風社
ルイスのゴシック小説『マンク』は、スペインの修道士アンブロシオを中心としたプロットと、二人の若者ロレンソとレイモンドを中心としたドイツ周辺を舞台にしたプロットの二つで構成されている。ここには歴史的な意味がある。出版当時のイギリスにおいて、スペインは前近代的で後進国としてのイメージが強かったが、ルイス自身の立場が随所に弁明されているドイツのエピソードがここに組み合わさることで、当時のスペインに対する独特の批判的言説が見えてくる。
「『マンク』における二つのプロットと世界史的背景」p. 117~138.