『チェンチ一族』におけるベアトリーチェの悪魔的論理
早稲田大学教育学部『学術研究』第58号―英語・英文学編―
パーシー・ビッシュ・シェリーの『チェンチ一族』は父親のチェンチ伯爵に犯された娘ベアトリーチェがチェンチ伯を暗殺する物語である。彼女が暗殺を正当化して雄弁に語る台詞は、パーシーの思想と相容れないものと思われるかもしれないが、実はここには彼の「詩の擁護」にも通ずる重要な思想が見受けられる。つまり、父殺しの真実を真っ向から取り扱い、その心理的側面を描き出して観客に提示するという「高次のモラル」を実現しているのである。
p.15~p.31