『ヴァルパーガ』における引き摺り下ろされた主人公:二項対立、三角関係、そして零へ(査読付)
立教大学文学部英米文学専修『英米文学』第67号
メアリ・シェリーの『ヴァルパーガ』では、主人公カストルッチョと二人のヒロイン、ユーサネイジアとベアトリーチェとの間に三角関係が形成されるが、ユーサネイジアとベアトリーチェとが結び付き、男性原理と女性原理という二項対立へと変わる。しかし、この対立もやがて解消し、カストルッチョだけが残される。カストルッチョの行いは小説の中身とは別に設けられた「結論」の中で簡潔にしか描かれない。この構造にはメアリの巧妙な暴君批判が含まれている。
p.1~p.19