階級・制度を越えた愛――メアリ・ウルストンクラフトの『メアリ』――
立教大学文学部英米文学科『立教レヴュー』第31号
『女性の権利の擁護』で有名なメアリ・ウルストンクラフトであるが、彼女の小説『メアリ』は小品ながらも当時の中産階級の女性のありのままの苦悩が描かれ、考察に値する。作為的な物語は避けられ、理想像ではなく、現実的状況の中で懊悩する女性を描き、社会的不正を告発するところに著者の意図はある。女性から見た女性の姿がヴィクトリア朝に先立って描かれたことは評価に値する。また、自伝的要素に基づく女性同士の関係はレズビアン文学の様相も呈している。
p.19~p.35