ロマン主義近親姦の再考――Mathildaの視点から
イギリス・ロマン派学会第30回全国大会(於京都大学)
近親姦はゴシック小説やロマン主義文学においてしばしば取り上げられるモチーフである。メアリ・シェリーの『マチルダ』は父親が娘のマチルダに近親姦的欲望を抱くことによって引き起こされる悲劇を描いたものだが、両者の心理的葛藤の巧みな描写は他のゴシック小説やロマン主義文学には見られないものであり、近親姦意識に苦しむ加害者と被害者の心理を鋭く突いたものだ。ロマン主義特有の近親姦への憧憬に対し、本作品は異を唱えている。