本稿では、紛争経験国において体育にかけられている期待を、カンボジア、ミャンマー、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ3国の体育カリキュラム開発に関わる経験を踏まえて紹介した。紛争経験国が、体育の授業にかける期待は各国の歴史的、社会的、文化的文脈に規定され多様である。また、その期待を実現する諸条件も異なる。しかし、国は異なれ、体育の授業を通して学校の魅力を高めることや非認知能力を高めたい、人が信頼でき、誰もが仲良くなれる社会を構築したい。このような思いが共通にみられる。また、制度設計の過程で人材が育成されていく。残念なことは、この過程で上から目線で対応する人々である。そこには、当該国の歴史、社会、文化に対する尊敬の念や異文化から学ぶ姿勢がみられない。重要な点は、開発支援を通しながら、自分たち自身を見直していく過程とも言える。