本研究の目的は暑熱環境下における運動前に手掌冷却装置である高速熱交換システム(Core Control)を用いた 10 分間の手掌冷却の影響を検討することであった.男性 8 名に暑熱環境下(湿球黒球温度:31.6~31.7℃)での運動開始前に手掌冷却を行う条件(Cool)と行わない条件(Norm)の 2 条件で 40%VO2peak 強度の自転車運動を 60 分間行わせた.その際に深部体温,心拍数,呼気ガスの測定を実施した.深部体温は条件間に差はなかったが,安静時からの変化量および変化量の 60 分平均は Norm に比べCool で有意な低値が認められた.心拍数,換気量,酸素摂取量,呼吸交換比に差はなかったが,二酸化炭素排泄量と糖質消費量は運動開始 5 分間において Cool で低い傾向を示した.以上の結果から,運動開始前の Core Control を用いた手掌冷却は深部体温上昇を抑制すること,運動初期の糖質消費量を抑制できる可能性が示された.