東京2020オリンピックにおいて暑熱環境がマラソン,競歩のパフォーマンスに及ぼした影響について検討することを目的とした.東京2020オリンピックのマラソン,競歩を対象として検討を実施した.各レースの30分前からトップ選手ゴール後30分間の湿球黒球温度(WBGT),気温,相対湿度,黒球温度の測定を実施するとともに,World AthleticsのHPより各選手の順位,記録,大会前までのベスト記録を抽出した.レース中の平均WBGTは24.79℃~28.21℃となり,男子マラソンでは注意の範囲であったが,それ以外の種目においては警戒以上の範囲であった.パフォーマンス低下率は男子マラソンで-7.4±3.5%,女子マラソンで-7.6±4.7%,男子20kmWで-8.0±4.7%,女子20kmWで-7.8±4.7%,男子50kmWで-7.5±5.2%となり,7%以上低下していたが,上位24位においては4%程度の低下となった.上位24位における順位とパフォーマンス低下率の関係では,50kmWにおいて成績が良いほど低下率が低くなる関係が認められた(P<0.05).以上の結果から,東京2020オリンピックにおいて注意から厳重警戒レベルのWBGT環境で競技をする場合,上位選手においては4%程度の低下率を示すこと,50kmWのような長時間競技においてはパフォーマンス低下を抑えることが成績に影響を及ぼすことが示された.