本研究では,運動選手に対する疲労回復のための一処方として利用されている高濃度酸素発生器を使用した酸素吸入に着目し,家庭用高濃度酸素発生器を使用した安静時の高濃度酸素吸入と常酸素吸入における,心拍変動や酸化ストレスへ及ぼす影響について検討することを目的とした.
その結果、高濃度酸素吸入は常酸素吸入と比較して、自律神経活動における副交感神経活動を低下させないことが示唆された。また、60 分間単回の高濃度酸素吸入については、少なくとも生体内レドックス(酸化還元)反応の観点からはデメリットを引き起こさないことが明らかとなった。今回は一過性の高濃度酸素吸入による影響を検討したものであったが、吸入後における自律神経活動に対する持続的な影響や習慣的な高濃度酸素吸入の酸化ストレスへの影響、最適な吸入時間、吸入後の睡眠の質などに関する検討については、今後の検討課題である.