本研究の結果,ストレートジャンプ跳躍時の水平移動方向は静的重心動揺度の変位方向と一致し,さらに移動距離と単位面積軌跡長との間に負の相関関係が認められた。したがって,姿勢制御機能が良好な選手は空中での重心移動に対する制御機能が優れ,競技スキルに直結する平衡調節機能の評価として単位面積軌跡長による評価が有用であることも示唆された。トランポリン競技のトップアスリートに対する単位面積軌跡長と競技スキルとの関連性を明らかにした本研究の成果は,姿勢制御機能が競技力に直結することを明らかにした新知見であり,顎口腔領域と競技スキルとの関連を解明する基礎的な資料になりうることが推測された。スポーツ傷害は外力に起因するもののほかに,平衡調節の乱れに起因するものも多いことから,姿勢制御機能に主眼を置いたアスリートへのアプローチが,競技力向上と傷害発生率・重症度の軽減の双方に貢献できる可能性が期待できる。今後,トップアスリートの姿勢制御機能と競技スキルとの関連性について,単位面積軌跡長に着目した検証を続けたいと考えている。