既に自身の手の内にあるものから脱皮し、専門に学んだ楽器に対する演奏技術を更に向上させていく気構えとその継続の必要性を感じている理由から、今学会での研究演奏にリスト作曲超絶技巧練習曲第4番「マゼッパ」を選曲した。養成校での音楽指導者としての面と、自らの専門楽器に関わる音楽への更なる探究心、この二面性を持ち続けることが重要だと考えたからである。この作品は、「技巧」という言葉がクローズアップされてしまいがちであるが、“transcendante”は「超越」と訳され、本質は、肉体・精神・魂の全てを超越するという意味である。単なる技巧面へのアプローチだけではなく、その根本にある意味を熟考した時、この選曲は「研究演奏」としてふさわしい曲であると考える。