今回の研究では、自閉症スペクトラム障害児(ASD児)の他者とのface-to-face 行動と笑顔との同期が動物介在活動(AAA)実施中に促進されるかどうかをASD児と普通児で比較検討した。本研究は愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所倫理審査委員会の承認を得て行なった。AAAのセッション中の各種計測は個別で実施した。ASD児はAAA中において第1から第4セッションにかけて、一般児と比較して笑顔量が限定的にしか生起せず、また「他者とのアイコンタクト」の重要な指標である「笑顔とface to face行動との同期」についてもすべてのセッションを通じて一般児と比較すると量的に著しく少ないことがわかり、ASD児においては社会的な笑顔の獲得については未発達であることが示唆された。しかしながら、ASD児の1名においてセッションを重ねるにつれて笑顔量が増大し、笑顔とface-to-face行動 との同期量についてもセッションを重ねることで増加したことが例示されたので、ASD児においても笑顔量が増える適切な条件さえ整えば、笑顔とface-to-face行動 との同期も促進される可能性があると考えられる。笑顔とface-to-face行動 との同期というものは他者との共感性の行動上の表現形と考えられるので、今回の研究結果からAAAはASD児の他者との共感性に関する行動を促進するために有効な治療的なツールとして活用可能であることが示唆された。