遅発性尺骨神経麻痺は肘関節の外傷後一定期間を経過した後に出現する尺骨神経麻痺であるが、原因外傷の多くは小児期の上腕骨外顆骨折といわれる。外傷発生から麻痺発生までの経過については諸説があり、数年から十数年とする報告が一般的である。今回我々は受傷から40年以上経過した後に発症した遅発性尺骨神経麻痺の1症例を経験した。本症例において原因となった外傷は、長期間が経過しているため判断が困難であったが、多くの文献に記載されているような偽関節は存在せず、何らかの原因で上腕骨外側部の成長障害が生じた結果発生したと考えられた。尚、小児の肘関節部骨折においては、骨癒合、機能的回復のみでなく、長期的視点から経過を観察する必要があると思われる。