本論文では、開催都市の動向に視点を定めつつ、日本厚生大会を分析することを通して、東京市・名古屋市・大阪市がそれぞれ如何なる思惑及びそれに伴い生ずる論理で大会に関与していったのかを明らかにした。東京市・名古屋市・大阪市にとって日本厚生大会は、各都市が直面していた問題及び課題への対応策として位置付くものであり、それぞれが抱いた思惑と置かれた現実的状況との狭間で、動員対象たる市民の身体を想定しつつ準備を主導した結果、その演技には各都市の論理が反映されたのである。本論文が明らかにしてきた歴史的事実は、会議と演技で構成される日本厚生大会が、開催都市の主体的関与なくして成立し得なかったことを示しているのである。