【要旨】頚椎症性神経根症と診断されたが,圧迫型胸郭出口症候群の兆候が混在した症例の理学療法経過を報告する.70 歳代後半の女性で,右第 3,4 指のしびれと右上肢の鈍痛を訴えた.右上肢外転・外旋位での挙上位などで右肩外側から前腕外側への鈍痛が間欠的に出現した.胸郭出口症候群に関連する特殊テストが陽性であった.座位姿勢では胸椎の後彎増強と頭部前方突出肢位を呈し,前胸部と頸部の筋群に筋緊張亢進を認めた.これらの筋が腕神経叢と鎖骨下動脈を圧迫し,症状を出現させると推測し,頸部筋群に対して軟部組織モビライゼーションとストレッチング,胸椎部の伸展運動,頸部筋群の筋力増強練習,神経系モビライゼーション,生活指導など行った結果,良好な経過が得られた.