東京都は応急手当講習の修了者数や市中のAED設置数が多いにもかかわらず,病院外で発生した心停止傷病者の社会復帰率が全国平均を下回っている。この原因を明らかにし,社会復帰率向上を目指すための方策について,特に共助体制の構築に着目し,考察した。
先行研究や公的機関のデータを分析し,社会復帰率に関与する因子を調査したところ,「救急隊の覚知から現場到着までの所要時間が長い」「覚知から病院収容までの所要時間が長い」「救急隊到着前に一般市民による心肺蘇生が実施されていた割合が低い」ことに相関があることが判明した。東京都の社会復帰率向上には,救急活動時間を短縮することとともに救急隊到着前の心肺蘇生実施率を上げることが必要であり,救急隊到着前の可能な限り早期から心肺蘇生を実行する仕組みづくりと,事業所・住民等が積極的に救急活動を支援する共助体制が必要である。