本研究では、筋線維から関節への活動の伝達について考える際には、筋-腱複合体の形状とモーメントアームを総合的に考慮する必要があると考え、足背屈の関節角度-トルク関係と前脛骨筋の筋-腱複合体の形状の関わりについて考察した。形状の評価には超音波断層法とMRI法を用いた。測定したのは、安静時及び随意最大筋力発揮時の前脛骨筋の筋束長、羽状角、解剖学的断面積であった。筋体積を算出し、筋の生理学的断面積を求めるとともに、関節トルクとモーメントアーム値から腱張力を算出し、固有筋力を求めた。これらの値を用いて、筋-腱複合体の形状が骨格筋の長さ-力関係の関節への伝達に与える影響について考察を行った。トルクは足関節角度110度で最大となったが、モーメントアームの影響をうけ、腱張力はより底屈位で最大となった。これらのことから関節のトルクや角度変化から筋の力や長さ変化を推定するとき、もしくはその逆を行うときには、筋-腱複合体の形状を考慮することが重要であることが示された。