犀星初期自伝小説の形成
室生犀星研究、第17輯、pp.4-17
犀星初期自伝小説の形成のモチーフについて考究した。当該作品群は、従来、素材主義的な発想に依拠して形成されたものと見做されてきた。しかし、実際には、主人公が詩人としての自己確立に至るまでの道程を描き出す教養小説的な構想に拠る作品群である。すなわち、『愛の詩集』刊行によって詩人としての自己確立を遂げた犀星が、その時点に発想の起点(=物語の到達点)を求め、過去を意図的に整序することにより形成された作品群と考えられる。
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