初期芥川文芸の一側面‐「父」並びに「猿」についての作品論‐ (査読付)
二松学舎大学大学院紀要二松、第9集、pp.57-80
芥川「父」「猿」は、初期芥川文芸における傍流作品である。ただし、本論文では、傍流であるが故に顕在化する側面があるという観点から、2作品の構造上の類縁性を軸に論究を加えた。両作は視点人物が他者の受苦を感受する精神的痛覚を持つという点において共通する。かかる心性を持つが故に、それぞれの視点人物は、その在り方の刷新が可能となっているのである。他者に対する開かれの可能性が示唆された小品として、両作の芥川文芸における位置付けを試みた。
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