『墨汁一滴』論への覚書‐随筆文脈から見た連作短歌群
情調と形象、1号、pp.37-45
正岡子規の短歌における客観写生から境涯詠への移行導因として、随筆『墨汁一滴』の持つ意義を論じた。「藤の花」および「しひて筆を取りて」の連作は、子規全歌業中の白眉である。注目されるのは、これらの境涯詠が新聞「日本」連載の随筆「墨汁一滴」中に発表されている点である。つまり、当該連作は自照性を要求する随筆文脈の中にあって準備されたのである。そこに子規晩年の境涯詠成立の一因を認め、考究した。
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