芥川龍之介「地獄変」の世界
日本近代文学会新潟支部例会
芥川「地獄変」の語りの特質を分析し、文芸構造の闡明に迫ろうとした。同作の語り手「私」は、偏向の度合いの高い語り手である。この点について、従来の作品理解では、登場人物の一人「大殿」に寄り添った語りと見るのが一般的であった。だが、もう一人の登場人物「良秀」に寄り添った語りとする見方も出来そうである。「大殿」サイドの語りと見た場合に生じる祖語の徴憑とその意味について論じた。