「羅生門」の構成について-下人の行動と心-
第15回 国際芥川龍之介学会(ISAS) オンライン大会(2020年12月19・20日→当該発表は19日) [予稿はオンライン配信。A4サイズ19頁。和文24200字。]
芥川龍之介「羅生門」における作中人物・下人の心理記述は、概ね明快・明晰である。だが、下人の行動、特に老婆に加える直接的暴力の動因は、明快・明晰な整理に馴染まない。それは、衝動あるいは激情・情動といった不透明で混沌とした駆動力だからである。「羅生門」においては、明快さ・明晰さを志向する〈光としての語り〉と、その光によって生成される〈闇としての下人の運動・身体〉とが、せめぎ合う。そこに作品解釈簇出の因由もある。以上が本研究発表の趣旨である。