犀星初期自伝小説の形成
室生犀星学会春季大会
犀星の初期自伝小説は、各々別個のモチーフで形成されたものと見做されてきた。しかし、自伝である以上、自身の過去が現在時より遡及して整序されているはずである。これらの作品は、すでに詩人としての地位を獲得した犀星が自身の過去を詩人への道程という形に捉え直すことによって形成されたものであった。また、しばしば語られる犀星初期自伝小説における美化の実質も、如上の作品形成の性格に起因するものと認められるのである。