下肢筋力は児童の体力向上に不可欠な筋力であるが、これまで児童の膝伸展筋力と足趾筋力を併せて測定し運動能力との関係を検討した研究はない。
本研究の目的は思春期前児童の下肢筋力と走力および跳躍力との関係を性差の観点から検討し、児童の健康増進につなげることである。
対象は小学3年生171人（男子：84人、女子：87人）とし、身長、体重、等尺性膝伸展筋力（膝伸展筋力）、足趾筋力、50ｍ走、立ち幅とびを測定・比較した。さらに、児童の「外遊びと室内遊びの割合」や「学校以外での運動時間」についてアンケート調査を実施した。
その結果、男子の膝伸展筋力および足趾筋力は50ｍ走および立ち幅とびと有意な相関関係を示したが、女子では膝伸展筋力は50ｍ走および立ち幅とびと有意な相関関係を認めたものの、足趾筋力はいずれも有意な相関関係を示さなかった。さらに男子では室内遊びよりも外遊びの割合が多かった(58.3%)が、女子は男子と異なり、室内遊びの割合が多かった（75.9%）。加えて学校以外で1日あたり1時間以上の運動を実施していた児童の割合は女子よりも男子で多かった（男子：71.4%, 女子：42.5%）。
以上より女子の足趾筋力は男子よりも十分に発達していないことが示唆され、男子もさることながら、特に女子は走動作や跳躍動作を含む遊びを外遊びの中に積極的に取り入れ、足趾筋力をはじめとした下肢筋力を十分に高めることが健全な身体の育成にとって重要であると思われた。
