本研究の目的は中・高齢者の下肢筋力およびバランス能力を年齢層の違いにより比較・検討することである。
対象は健康づくり体操教室(体操教室)に定期的に参加している60~84歳の女性68人とした(60歳代:20人、70歳代:40人、80歳代:8人)。なお、対象者の体操歴は11.7±8.5年であった。測定項目は身長、体重、等尺性膝伸展筋力(膝伸展筋力)、足趾筋力、開眼片足立ちとした。
60歳代、70歳代、80歳代の体重あたりの膝伸展筋力および足趾筋力(膝伸展筋力/体重、足趾筋力/体重)を各年齢層で比較すると、膝伸展筋力/体重では年齢層間で有意差は認められなかったが、足趾筋力/体重では60歳代と70歳代、60歳代と80歳代の間で有意差がみられ、80歳代の足趾筋力/体重は60歳代よりも約35%小さかった。さらにバランス能力の指標である開眼片足立ちでは、いずれの年齢層間でも有意差が認められ、80歳代は60歳代よりも約49%小さい値を示した。
体操教室に定期的に参加している中・高齢者の膝伸展筋力は加齢による低下を示さなかったが、足趾筋力およびバランス能力では、加齢低下が認められた。したがって、体操教室参加者のさらなる体力向上を図るためにも、足趾筋力やバランス能力の向上を意図した運動を日常生活や体操教室の中に積極的に取り入れる必要があると思われた。