【目的】
Leahan et al.1)は大学野球選手の跳躍力と投球速度の間に有意な相関関係があることを報告し、特に横方向の跳躍力が投球速度に影響を及ぼすことを示した。しかし対象者の年齢、競技レベル、ポジションにより違いがみられることが推測される。
そこで本研究では、高校野球選手の跳躍力と投球速度の関係を検討し、高校野球選手の競技力向上につなげることを目的とした。
【方法】
対象はK市の高校野球選手43人(1、2年生)である。測定項目は身長、体重、跳躍力、投球速度とした。跳躍力は横方向の片脚ジャンプ(左右)および立ち幅とびの測定を行った。さらに投球速度の測定はストレッチ投球およびシャッフル投球を実施した。ストレッチ投球の測定は18.44mの距離からセットポジションで行い、シャッフル投球は3mの助走後に18.44mの距離から投球するものとした。データの分析は、まず対象者を投手(10人)と野手(33人)に分けて行い、次に本研究の結果と先行研究を比較・検討した。
【結果および考察】
投手と野手で跳躍力と投球速度を比較した結果、両者の間に有意差はいずれも認められなかった(ストレッチ投球:投手110.8±9.2km/h, 野手106.4±8.2km/h, シャッフル投球:投手116.5±9.8km/h, 野手113.8±9.1km/h)。ストレッチ投球はセットポジションからボールを投げるため、投手の投球速度は野手よりも速く、一方シャッフル投球は助走後に投球するため、投手よりも野手で優れていることが推測される。しかし本研究の結果をみると両者の間に有意差はみられなかった。本研究の対象者は競技レベルが低く、かつ1、2年生であったため、ポジションの特性が明確に反映されていなかったものと考えられた。
次に本研究と先行研究1)の結果を比較すると、ストレッチ投球、シャッフル投球、跳躍力のいずれにおいても先行研究は本研究よりも優れていたが、跳躍力では特に横方向の片脚ジャンプで両者の差が大きかった。
以上より本研究の高校野球選手では、投球速度もさることながら、特に横方向の跳躍力が十分でないことが示唆された。したがって投球速度を高め、パフォーマンスを上げるためにも跳躍力に影響を及ぼす下肢や股関節の筋群を筋力トレーニングで積極的に強化するとともに、とりわけ投手では下肢を十分に使った投球フォームを身に着ける必要性があると考えられた。
【参考文献】
1. Leahan,G.et al.:J Strength Cond Res, 27(4), 902-908, 2013.