本研究では中高齢者を対象に学生時代(小学校から大学の間)のスポーツ歴と体力(等尺性脚伸展筋力や動的バランス等)との関係を検討した。
対象は定期的に体操教室に通っている50~84歳までの女性80名とした。測定項目は身長、体重、等尺性脚伸展筋力(脚筋力)、足関節底屈筋力(底屈筋力)、動的バランス、開眼片足立ち、反応時間とした。
対象者を50~59歳(50代, n=12)、60~69歳(60代, n=37)、70歳以上(70代, n=31)の各年代に分け、加齢による変化と体力との関係を分析した。その結果、体力は加齢に伴い徐々に低下する傾向を示し、特に脚筋力/体重、動的バランス、開眼片足立ちでは50代と70代の間にいずれも有意差が認められた。
さらに過去のスポーツ歴と体力との関係を検討したが、学生時代にスポーツ経験を有する者の体力は無い者に比べて、いずれも高い傾向を示し、特に脚筋力/体重と底屈筋力/体重では両者の間に有意差が認められた。また1週間あたりの運動実施頻度でも同様に比較をしたが、運動経験の有る者と無い者との間には有意差はいずれもみられなかった。
以上より現在の運動の実施頻度もさることながら、学生時代の運動習慣が中高齢者の体力に影響を及ぼしている可能性が示唆された。したがって学生時代に運動習慣をしっかりと確立し運動を定期的に継続することが、その後の体力維持に重要な役割を果たすことが示唆された。