ウエイトリフティング選手では、第一肋骨の疲労骨折の発生頻度が高いことが知られているが発生頻度や機序の詳細な解明にまでは至っていない。本疾患の臨床像やその治癒経過は様々で、骨癒合まで1 年近く要する例も散見される。骨癒合の獲得には一定期間、局所の安静が必要となるため、トップアスリートにとって、この期間は競技力向上の妨げになっていることから本研究では大学生アスリートを対象として、上記骨折の発生頻度を明らかにし、有用な理学所見、受傷リスクや受傷機転の推測と予防プログラムの検討を目的として調査を行った。第一肋骨疲労骨折の発生率は、骨折の既往も含めると 約 30%(男子 34 .6 %、女子 16.7 %)に発生し、1年間で 約 15 %(男子 18.8 %、女子 9.1 %)の選手に 発生していた。本疾患の診断に有用 な所見としては、安静時もしくは動作時の肩甲背部痛、すなわち「ケンビキ」 と
Erb ‘s point の圧痛が挙げられ、特に 両所見が陽性であった 選手に 対して は、第一肋骨疲労骨折の有無に ついての精査が推奨される。頚部筋力と本疾患の間には有意な関連性はなかった。