神経生理学者であるJacobsonによって開発された漸進的弛緩法(以下、PR)と精神科医であるSchultzによって創始された自律訓練法(以下、AT)は、サイコセラピーの一環として利用されている。PRは身体から心への弛緩法であり、ATは心から身体への弛緩法である(佐々木・後藤、1997)といわれており、本研究では心理臨床実践においてきわめて重要な意味をもつ自己受容にその特徴があらわれるか否かについて明らかにすることを目的とした。PRは身体的アプローチであり,ATは心理的アプローチである(高井、2011)。したがって、その特徴は自己受容の観点からみると、ATは精神的自己に影響を及ぼし、PRは身体的自己に影響を及ぼすものと予想された。しかし、ATは精神的自己だけでなく、身体的自己にも効果を示し、本研究によりATの更なる有効性を探る知見が得られたといえる。