本研究は大学生を対象とした股間の打撲に関する実態調査より,股間に存在する急所(通称・金的,釣鐘)について考察したものである.有効回答を得られた522名の股間打撲の経験率は男性77.9%,女性25.1%で,男性に多かった.男性ではスポーツ活動中の受傷が82.4%,女性では日常生活動作における受傷が52.3%を占めた.疼痛は男性に有意に強く,NRSは男性8.1±1.6,女性5.6±2.0であった.また男性は,腹痛,気分不快,冷汗,脱力感などの自律神経症状および精神的な症状を伴いやすく,精巣の上昇感や消失感を感じた者も多かった.症状の消失に要する時間は,男性は3~5分以内,女性では1分以内が多く,多くが短時間のうちに症状の消失をみており,医療機関の受診率は1.9%に留まった.受傷後の対処法は,男性では跳躍,女性では何もしないと回答した者が最も多かった.本調査により,股間の急所は男性特有のものであることが改めて明らかとなった.股間の打撲後,短時間に症状が消失し器質的損傷を伴わない場合は問題を生じにくいと考えられるが,精巣破裂,精巣転位症,陰嚢内血腫などを伴う場合は早急かつ慎重な対応が求められるため,安易な経過観察は避けるべきである.