健康柔道整復学科の柔道授業における「投の形」の具体的指導の例について報告した。形は柔道の「理合い」を動作で説明するものであり、いずれも無理のない合理的な動作が精選されている。形と乱取りは車の両輪、また文法と作文に例えられ、双方を偏りなく修行することが重要とされる。形の指導には「理合い」、「間」等の武道的抽象的な言語が多用されるが、これらの語は具体性を欠き、特に初心者の指導においては有効でない場合がある。この事実を踏まえ、授業では、講道館監修による教本とDVD、インターネット、簡便なICT機器を活用しつつ、武道的抽象的な概念を具体的身体動作として示すよう努めた。この工夫により、学生たちの理解が促進され上達の一助となったことが推測された。「理合い」や「間」が武道の修行上重要な概念であることは言を俟たないが、指導者はその概念を反映した動作を、修行者の思考や成長を狭隘化しない範囲で具体的に指導することが望まれる。