「ほねつぎ」という意味においての柔道整復師の養成は、伝統的に徒弟制によって行われてきた。徒弟制により伝承されるものは、知識や技術だけでなく、師やその集団の持つ「何を善とするのか」という価値観、具体的には「どの状況を指向(忌避)し仕事をするのか」、「どの状況が歓迎(批判)されるべきなのか」などの価値判断も含まれる。つまり、知識や技術はハビトゥスの共有を前提として伝承されると考えられる。その集団に所属した新入りは、柔道整復業務の周辺業務から、師や先輩が何を善とし何を悪とするのかを肌で感じながら業務を行う。やがてハビトゥスは身体化され、新入りは新入りでなくなり、徐々に集団内で重要な役割を担っていく(正統的周辺参加)。本研究では、熟達の柔整師 expert judo therapists のライフストーリー研究を基に、ハビトゥスの概念を中心として、柔道整復師養成にみられる徒弟制の再解釈を試みた。