本研究は、熟達の柔道整復師 expert judo therapist が、きわめて複雑かつ困難な臨床上の状況(修羅場)をいかにして克服しているのかについて、反省的実践家 reflective practitionerの概念を援用しながら考察したものである。専門家がある行為をするとき、その行為の過程で即興的かつ無自覚的で、必ずしも言語の媒介を必要としない省察が繰り返されている。つまり問題解決のための枠組みは一定ではなく、絶えず組み替えられていくと考える。熟達の柔道整復師の語り narrative からは、きわめて一回起性の高い、しかし膨大で豊かな英知を含む戦争物語 anecdotes を抽出することができる。本研究では、反省的実践家としての熟達の柔道整復師を捉え、再解釈を試みた。