柔道整復師は、別名を「ほねつぎ」「接骨師」という。骨折、脱臼、打撲、捻挫など、運動器に生じた損傷を手術や薬物に依らず徒手で治療する職業であり、国家資格である。しかし現在、整形外科医の充足や熟達者の高齢化により、純然な「ほねつぎ」という意味においての柔道整復師は激減し、英知伝承も危機的状況にある。本研究は、かつて日本における重要な社会資源として存在した「ほねつぎ」としての柔道整復師の技術、およびその周囲の知識の総体を記述し、質的に記録・保存することを目的とする。絶滅の危機に瀕する熟達した柔道整復師 expert judo therapist へのインタビュー調査および分析により、彼らが「ほねつぎ」として克服してきた「修羅場の経験」extreme experiences の記述により質的に記録し、暗黙知に立脚した言語化困難な技術のアーカイブ化を目指す。