柔道競技に限らず、あらゆる競技の審判員には「勝つべき選手をきちんと勝ちにする」ことが求められる。そのミッション達成のための努力を救護スタッフにも求める。もちろん、救護スタッフも、安全な大会運営に関する努力を審判員に求める。救護スタッフとして柔道競技に関わっていると、審判員への要求が数多あることに気づく。その逆もしかりである。試合や大会において最も重要なことは、選手および関係者の安全である。危険行為などは論外として、試合中の審判員が最も嫌うことは、「始め」の後の遅延状況や遅延行為である。さらに最も恐れることは、遅延状況の後に試合展開が変わってしまうことである。そして、最も避けなければならないことは、選手の力量以外の要素が勝敗の逆転につながることである。本シンポジウムでは、試合中の出血(止血)および絞技における失神(落ち)を中心に、審判員の視点から柔道救護に関する私見を述べた。