本研究はドーピングが少ない日本と、ロシアに次いでドーピングが多いイタリアを対象に、ドーピング意識の違いを明らかにすることを目的とする。調査対象者は体育系大学の学生とした。
「ドーピングに対する考え方」の質問項目に対し、ドーピング項目とスポーツ規範項目に分け、仮説モデルの構造方程式モデリングによる検証を行った結果、尺度の信頼性が示された。
結果1.「ドーピング意識」因子には差が見られなかったが、「特別ドーピング」因子(有名スポーツ選手やチームの勝利のためのドーピングを肯定する意識)では日本がイタリアより有意に低い値を示した。
結果2.日本と比べてイタリアでは有意に「フェアプレイ精神」と「ドーピング意識」に負の影響が強く見られ、「フェアプレイ精神」の値が高いほど「ドーピング意識」に負の影響を与えていた。また、イタリアと比べて日本では有意に「特別ドーピング」と「ドーピング意識」に正の影響が強く見られた。
結論として、①イタリアの体育学専攻大学生は一般的にはドーピングを容認しないが、有名スポーツ選手やチームの勝利のためのドーピングは容認する傾向にあり、日本は容認しない傾向があること、②イタリアではフェアプレイ精神が高いほど一般的なドーピングを容認しない傾向があるが、日本ではフェアプレイ精神とドーピング意識の関係が弱いこと、③ドーピング意識に対する特別ドーピング意識の影響力はイタリアよりも日本のほうがより強いことが明らかになった。