本研究は現代スポーツに最も危機的な状況をもたらしていると考えられるドーピング問題を克服するための思想提示を目的とした。その観点を競技者自身の身体観に定め、身体を「持つ(to have)」と「ある(to be)」の次元から考察を行った。その結果、身体を「物」ととらえるデカルト的な西洋の身体観がドーピングに影響していると考えられた。それを克服するための身体観を禅哲学に求め、「ある(to be)」の次元で身体と共に競技を生きる競技者のあり方が示された。この「身体である」という考えは、競技者をフェアな競技生活に導く指標になると考えられる。